文京AI研究会
【開催レポート】チャットボットから「AIエージェント」の時代へ。文京AI研究会で共有された最新知見と実践ノウハウ
活動レポート
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【開催レポート】チャットボットから「AIエージェント」の時代へ。文京AI研究会で共有された最新知見と実践ノウハウ

2025年11月23日(土)、我楽田工房にて「文京AI研究会」が開催されました。 今回のテーマは「AIの最新動向と実践活用」。エンジニアによる専門的な解説と、実際のツールを使ったデモンストレーションを通じて共有された、最新の知見や学びをレポートします。


■ メイントピック:「AIエージェント」の到来

これまでのAI活用の主流は、人間が質問して答えを得るチャットボット型でしたが、最新のトレンドはエージェント型へと大きくシフトしています。

  • エージェント型とは:人間の代理人として、自律的に複数の作業をこなすAI。
  • 進化の速度:1回の指示で複数のタスクを自動実行し、24時間連続稼働が可能になりつつあります(わずか1ヶ月前は7-8時間が限界でした)。
  • 未来予測:OpenAIのサム・アルトマン氏が予言する「一人で1兆円企業を作る時代」が現実味を帯びており、スタートアップレベルのシステム構築も個人で完結できるフェーズに入っています。

■ 紹介された最新ツールと活用事例

研究会では、具体的なツールの特徴と、それらがもたらす「コスト革命」について実演が行われました。

1. Manus(マナス):Web・アプリ開発の自動化

言葉で指示するだけで、複数のAI(ChatGPT, Gemini, Claude等)を裏側で操作し、成果物を作成するツール。

  • デモの衝撃:イベント用ランディングページ(LP)の作成を指示したところ、調査・構成・実装・公開までをわずか5~10分で完了。
  • コスト対効果:従来なら外注費10万円以上かかる作業が一瞬で終わるため、ビジネスのスピード感が劇的に変わります。

2. Google Gemini Nano Pro:世界を理解する画像生成

開催直前(11月20日頃)にリリースされた最新モデル。

  • 特徴:単なる画質向上ではなく「物体の構造や世界観」を理解した上で、4K解像度の画像処理を行います。写真内の文字生成の精度も飛躍的に向上しています。

3. コンテンツ生成(Sora / Suno / AI Studio)

  • 動画・音楽:スマホから自分の顔と声でCMを作ったり(Sora)、歌詞を指定するだけで演歌やロックを作曲(Suno)したりすることが可能。
  • ニュース動画制作フロー:原稿作成(ChatGPT)→音声生成(AI Studio)→画像生成(Gemini)→動画化というフローにより、著作権フリーかつ短時間での動画制作が実演されました。

■ 実践的な学び・Q&Aからの知見

質疑応答やディスカッションの中で共有された、明日から使える「AI活用のマインドセット」です。

学習コストと方法論

  • 高額セミナーは不要:月額約3,000円のChatGPT(有料版)が、世界で最も忍耐強く優秀な先生です。「わからないからわかりやすく教えて」と聞けば、何度でも教えてくれます。
  • ツール選び:AIの進化は速く、最適なツールは頻繁に変わるため、年間契約ではなく月額課金で柔軟に乗り換えるのが推奨されます。

プロンプトと修正のコツ

  • 部分修正は難しい:AIに対して「ここだけ直して」と指示するのは、実は人間相手と同様に難易度が高い作業です。
  • 解決策:複数パターンを生成させて良いものを選ぶか、最初から条件を変えて作り直させる方が、結果的に早くて高品質になります。

デザイナー・クリエイターの未来

  • 「作る」から「選ぶ」へ:デザインや音楽の生成コストが下がったことで、かつての音楽業界(打ち込みやカラオケの普及)と同じ変化が起きています。
  • 勝機:作業者としての価値は下がりますが、「今までになかった新しい価値の組み合わせ」や「隙間を突くビジネスモデル」を生み出すクリエイティブな能力の重要性はむしろ高まります。

高齢者や初心者へのアプローチ

  • 音声対話の活用:キーボード入力ではなく、音声機能を使って「おしゃべり」感覚で使うのがベスト。自分史の口述筆記や、ドライブ中の話し相手として活用することで、ITリテラシーに関わらず恩恵を受けられます。

■ 総括:AI時代における「人間の役割」

AIが進化し、事務作業やコンテンツ制作が自動化される中で、逆に浮き彫りになったのが**「リアルな体験の価値」**です。

  • AIが得意なこと:効率化、コスト削減、24時間稼働、パターンの生成。
  • 人間がすべきこと:コミュニティ作り、場所の共有、感情の機微を汲み取ること、そしてAIが生み出した時間を「喜びの共有(おすそわけ)」に使うこと。

「AIを自分の拡張機能として使い倒し、空いた時間で人間らしいリアルな価値を創造する」。これが今回の研究会で得られた最大の結論でした。